KEK素核研報告(E-sys活動報告) 2021年3月
エレクトロニクスシステムグループ
本グループはつくばと東海両キャンパスで開発拠点を運営し、連携して 国内外で進行しているプロジェクト用半導体センサー、集積回路、モジュール DAQシステム開発を行っている。
0)Open-It関連(http://openit.kek.jp)
今年度はオンライン授業で計測と制御を開催した。7/27〜7/31:参加者76名、内単位取得希望者16名、ASICトレーニングコース 9/23〜9/25:参加者10名FPGAトレーニングコース 9/3〜9/4:参加者10名
1)エレクトロニクスシステムグループ東海分室
東海分室ではJ-PARC実験向けを中心としてFPGA技術・バックエンドシステムの開発を進めている。12月に技術職員が東海分室へ異動し、J-PARC実験向けの基板開発をより推進する体制が整った。計測システム研究会2020をKEK東海キャンパスで開催し、分野を横断して総勢100名ほどが参加した。10GbpsのSiTCP (SiTCP-XG)をBBTと共同で開発し、同社よりベータ版のリリースを達成した。またSiTCP-XGを搭載し10GbEで大データ出力が可能な次期ハドロン実験向けの基板 (AMANEQ)を開発した。時間情報の連続取得が可能なTDCを開発(streaming TDC)、COMET 8GeVextinction測定へ応用した。
2)SOI検出器グループ
将来の高エネルギー実験に向けた半導体崩壊点検出器を海外研究機関と協力して開発中。必要とされる分解能、放射線耐性、読み出し速度、低消費電力化等の厳しい要求を達成すると共に、検出器の大面積化、システム化を目指す。今年度は昨年度試作したチップの評価試験を行い目標の達成度や問題点を明らかにする。
3)高集積システムインテグレーション
東海分室と協力し、ア)高耐放射線化R&D イ)高集積高機能化R&D を中心に国内外のグループと協力推進おり下記に一部の内容を記す。今年度新たに獲得した外部資金も含め複数の外部資金(科研費、企業との共同開発および実験プロジェクト資金を含む外部資金)によって進められている。
ア)耐放射線耐化R&D高放射線耐性半導体検出器の実現のための調査研究・Grad(~10MGy)でのトランジスタ耐放射線測定コロナの影響を最小限にしつつ10MGyまでの65nm半導体プロセス評価を進めている。更に22nmプロセスのトランジスタを開発した。来年度評価予定である。
・TIDダメージの回復機能を有したLVDSドライバ回路を設計し、設計データを2020年11月にサブミットした。
・シリコンカーバイトピクセル検出器
産総研と共同でSiCと2次元の読み出しASICをスタッドバンプ技術で実装したSiCピクセル検出器の評価を実施中である。またSiCセンサーに印加するバイアス電圧を下げるために、素子表面にトレンチ構造を施したSiCセンサーの製作手法に関する共同特許を申請した。
イ)検出器高集積高機能化IoT化R&D
・g-2シリコンストリップ検出器用フロントエンドASICの開発
昨年度製作した128チャンネルのアナログ・デジタル混載チップSliT128Cをストリップセンサーと接続し、所望の性能が得られていることが確認できたため、今年度では量産を行った。
・Belle II シリコンストリップ検出器用フロントエンドASICの開発
Belle II実験用に修正を加えた128チャンネルのフロントエンドチップを新たに設計し製作を行った。
・ニュートリノ/暗黒物質探索実験用TPC読み出しASICの開発
神戸大学、岩手大学と共同で液体アルゴンTPC(陰イオンマイクロTPC)用にGEMからの信号を読み出すための汎用性の高いフロントエンドASICの開発を進めている。常温での性能評価は終了した。液体アルゴン温度でも動作するように回路修正を加えたチップを製作した。
・J-PARC実験用シリコンピクセルASICの開発
J-PARC実験での使用を念頭に、スペクトルスコピーとカウンティングの両方の使用目的に対応できる汎用性の高いシリコンピクセルASICを65 nmプロセスにより試作した。
・TCP-ADC開発
8チャンネルADCの出力を1GbEを通してコンピュータへ送ることが可能な高機能集積回路の開発中で改良版を製作し今年度中に評価を行う。
ウ)モジュール開発
高輝度LHC-ATLAS実験に向けたミューオン検出器トリガー・読み出しシステムで用いる回路基板を東大・名古屋大とOpen-Itプロジェクトで開発している。現在、各機関の大学院生や研究者により、3つの開発プロジェクトが進行中である。COMET実験で用いるエレクトロニクス開発の放射線耐性試験を行い、種々の開発が行われている。